201876日(金)〜8日(日)、北海道本別町にて、地域包括ケア研究所と同町共催で「地域医療を学ぶー星空キャンプ2018」が開催されました。全国から医学生、看護学生、医師、看護師、保健師、介護士、ソーシャルワーカーのみなさんが集まりました。

 

講師には、研究所所長の鎌田實先生、副所長の鷹野和美先生二宮先生、諏訪中央病院の山中先生、名寄市立病院の酒井先生、山根由起子さん、ファシリテーターには研究所の大曽根、藤井、本別町保健所長の飯山さん、国保病院の郡山先生。現場で地域医療や総合診療を実践者たちが集い、講義やワークショップ、フィールドワークを行いました。

 

前半のこのレポートでは、豪華なゲスト陣による講義の模様をそれぞれダイジェスト版で紹介します。後半のレポートではワークショップを中心にレポートしています。

 

 

 

    1.  

【ウェルカムワーク】

大曽根さん
大曽根さん
星空キャンプへようこそ!自己紹介を兼ねてチェックインをしましょう。そして、この3日間が終わった時にどんな新しい自分に会いたいのかを言語化していきましょう。

 

初めまして同士で緊張が感じられた会場内も、参加者の皆さんの表情が和らぎ、お互いの話しからも刺激を受けているようでした。

 

 

【講義・スピーチ】

“地域医療はライブのように面白い”。レジェンド鷹野先生が語る地域に出る魅力とは。

 

鷹野先生は、1983年に諏訪中央病院が日本で初めてデイケアや訪問看護を始めたタイミングに居合わせた稀有な先生です。現在は学生の教育に携わり、若い人の背中を押す役割を担っていると話していた先生が、今の社会の流れや医療や介護に求められていることを踏まえた上で地域医療の魅力を語りました。

 

地域医療の醍醐味はインタラクティブ(双方向)であること。住民の反応がダイレクトに帰ってくる。例えるならライブパフォーマンスのよう。顔が見えるし、やりたいことが住民と一緒にできる。

 

地域の7割が医療と福祉が主な産業になっている現状の中で、国からは2025年までに地域包括ケアシステムを作ってくださいと言われています。鷹野先生は地域医療の要をチーム医療住民参加の2つだと言います。

 

チーム医療とは、職種が多数揃っていることでも医師の指示がどれだけ通るかでもない。患者さんから見たら「みんなが私に関わってくれる人」。チームで関わったら喜びは×人数になるし、悲しみや失敗も分かち合えるのが本当。

 

住民参加を促すことは、どこの地域でも課題意識を持たれているのではないでしょうか。病気の予防や健康の維持増進については、住民自身が自分ゴト化できてはじめて継続されていくものです。当時の諏訪中央病院では、住民に”劇”を通して健康について教えたり、寄合に押しかけて予防の啓蒙が行われたそうですが、それを積み重ねるうちに住民の方々が病院に足を運んで学びに来てくださったり、デイケアのボランティア活動に参加くださるようになるなど、住民参加の成果がみられはじめました。

 

長野県を離れて違う場所に赴いた時、これまで自分たちの取り組んできたことの素晴らしさを改めて感じたという鷹野先生。同時に、地域ごとの仕組みづくりの必要性も感じたようです。最後に今後の課題について次のように話していました。

 

地域と無関係に存在する医療や福祉はありえないのに、「地域医療」「地域包括ケア」と言わなければならないのは、今、その仕組みが整っていないから。今後の課題は地域包括クリティカルパスとカンファレンス。病院の中だけのものをどれだけ地域まで拡げることができるか。医療者と住民が一緒になって作り上げていきたい。

 

 

鎌田先生のウェルカムスピーチ【行動変容を促せるプロフェッショナルであれ!】

地域包括ケア研究所所長であり、星空キャンプの塾長でもある鎌田先生からは、「行動変容」をテーマとしたスピーチがありました。
大学教授がどんなにいい話をしても、偏差値が高くても、患者さんや住民の心をつかむことができなければ行動変容は起きないと鎌田先生は言います。そのために私たちプロフェッショナルに必要な3つのこととは、、、

 

  • 誰よりも実践者であること
  • 相手の行動変容を促すためには、まず私たちが実践者でなければなりません。自分が、自分の家族が幸せであり続けることを見せることで相手の変容に繋がっていきます。
  • 自分だったら、という視点を持ちつづけること。
  • 鎌田先生たちが地域包括ケアを始めた時、制度も法律も整っていませんでした。その時に、”自分が寝たきりになったらどうしたいか”、”自分が介護者になったらどんなものがあったら頑張れるだろうか”と想像してみたそうです。地域包括ケアは相手の身になるという視点から始まります。
  • 目標設定を間違えないこと
  • 私たちは医療者はともすると健康になることを目標にしがちですが、鎌田先生は幸せであることを目標に地域医療に取り組んでいます。目標設定を間違えると、それに伴う行動も、得られる結果も全て変わってきます。達成するのに高いハードルを感じる目標ではなく、スモールステップを経ていく重要性を話しました。

 

 


鎌田先生
鎌田先生
心を持った人間を、自分たちはどう見ていったらいいのか、に気がつけるか。私たちの喜びは、自分の命を主体的に選択できること。プロフェッショナルである自分たちも、住民も患者さんも同じ。そして1%でも誰かのために手を差し伸べられる自分であるように。

 


医療4.0によって起こる、私たちの社会や生活の変化とは 

データ解析のプロフェッショナル、二宮先生からはAIやビッグデータの台頭によってこれから起こりえる社会や生活の変化についてお話しいただきました。

医療は大きな転換点を迎えていて、AIやビッグデータの解析など、科学の進歩によるイノベーションが形に見える形で様々な領域に広がっていくことが予想されています。


参加メンバーや他講師陣とも熱いディスカッションがあり、アーティスティックな部分とサイエンティフィックな部分の両方の側面について、サイエンティフィックな領域が拡張することは明白だが、その領域においていかにアーティスティックな側面を含めていくかが重要ではないか、などと意見が出ていました。

 

地方であるからこそ、イノベーションによる恩恵も大きいという側面も考えられ、地域医療においてきちんとウォッチしていくべき領域であると改めて感じた方も多かったようでした。

 

 

 

道北の地域医療の実践と今後の課題

名寄市立病院の酒井先生からは、「医療を守る=地域を守る」というテーマで、道北エリアの地域医療の実例をお話しいただきました。

 

名寄市立総合病院は道北の地域中核病院で、兵庫県とほぼ同じ面積をカバーしています。それぞれの医療機関の距離が遠く、人口当たりの医療スタッフが全国平均以下、専門医の不在など多くの「ない」を抱えていますが、救急需要への取り組みとしてドクターヘリやドクターカーを持ち、”ポラリスネットワーク”(遠隔診断サポートネットワーク:診療情報の共有とテレビ会議システムを合体させたもの)を構築するなど、必要に迫られながら仕組みを作ってきました。

ポラリスネットワークができたことにより、それまで搬送決定に約100分かかっていたものが、日中は23分、夜間は46分と大幅な短縮に成功しています。また、遠隔で専門医がサポートすることにより搬送不要例が20%あるなど、システムの稼働による恩恵は確実にあるようです。

今後の課題として、総合診療、老年を担える医師の育成や、連携(力)のある人材育成、名寄市内の地域包括ケアシステムを作っていくことを挙げました。

名寄市立総合病院WEBサイト

 

 

「地域で取り組む『食べる支援』」山根由起子看護師

 

 

 

摂食・嚥下障害看護認定看護師の山根さんの活躍のフィールドは臨床・教育・研究の3つ。

 

患者さんや家族の意思を尊重できる医療者であるために、病院・在宅に関わらず学び続けていく必要があること、そのことが摂食嚥下機能の維持や介護者を敬うことにつながることを話していただきました。

 

ある日和菓子や杜氏職人さんたちとつながったのをきっかけに、嚥下機能を考慮した羊羹の商品を開発し、販売するまでになったという山根さんたち。「食べる」という日常の行為が、医療や福祉、職人さんなど、業界を超えてさまざまな人をつないでいることも地域に出て得られた視点だったと楽しそうに語っていたのがとても印象的でした。

 

 

星空キャンプ後半のレポートへつづきます。