北海道本別町の取り組み

地域包括ケア研究所は、2017年度より本格的に北海道・十勝にある過疎の町“本別町”の地域包括ケアからの地域づくり事業を支援しています。本別町は、帯広と釧路の中間程に位置する広大な十勝平野にある人口約7,200人の町です。

高齢化率は2017年に39.4%となり、40%の大台を目前にしています。

このまま推移すれば、2025年には人口6,200人、高齢化率42.7%となる想定で、人口の減少に加え、医療や介護の人材資源が絶対的に不足していくことが見込まれます。さらに、安心して暮らすことが出来る医療インフラがなければ、さらに人口減少を加速させる可能性もあります。

一方、「福祉でまちづくり」宣言をし、本別町銀河福祉タウン計画も7期目に入る本別は、福祉先進地域です。しかしながら、どの地域でも抱える“医療・介護・福祉”のシームレスな連携の仕組みと人材難という課題を等しく抱えています。

私たちは、見せかけのハコモノと会議体を持つだけの地域包括ケアではなく、本当に活用される、皆が必要とする地域包括ケアの仕組み作りを手掛けています。

地域を支える公立病院の挑戦の軌跡

「地域を支える医療機関として」
人口7200人の本別町の地域医療を支える唯一の病院である本別町国民健康保険病院の再生支援を応援しています。一般60床の地域の医療機関は、資金も限られている、人材も限られている、市場も限られている、という無いことばかりの厳しい環境ながら、地域で必要とされる医療機関を目指して、奮闘中です。

<十勝ブルーと本別町国保病院>

「ワーキンング・チーム」の結成
国保病院の一つの転機は、ワーキング・チームの結成でした。院内の全ての部署から13名のメンバーを選抜し、国保病院が危機を乗り越えるための、熱い議論を繰り広げています。残された望みを形にするために、研究所とワーキングチームは挑戦を続けていきます。

<ワーキングチームの様子>

「新公立病院改革プラン」の策定
国保病院が、今後本別町に真に求められる存在になるために、病院の改革プランの策定に取り組みました。改革プランは、ワーキングチームで議論した内容をたたき台にし、院長をはじめとした経営の中心メンバーを巻き込んで策定しました。
これからは、このプランを実行していくアクションプランの実行段階に入っていきます。

地域の健康作りの活動

地域での活動

本別町は、面積392㎢(東西31.8km 南北16.5km)の広大な面積を抱える町です。地理的にも市街地に集まってイベントをやるような方法だけでは、町民の健康を守ることができません。

私たちは、本別町の各自治会を回り、直接顔を見える関係を作りながら、それぞれの地域ごとに健康になっていく動機づけを高めてもらう活動をしています。

<地域の保健師さん>

2017年度は、美里別地区、仙美里地区、本別地区の三か所における健康講話に加え、本別小学校と本別中学校ではいのちの講話を行いました。

<食生活改善推進委員の皆さんと>

地域包括ケアの仕組み作り

本別町は人口減少、少子高齢化という課題を抱えた北海道十勝の過疎地の街です。今後、地域の医療・福祉・介護の仕組みを維持し、いつまでも住み続けることができる町を目指すためには、地域包括ケアへの取り組みは必須です。
私たち地域包括ケア研究所では、本別町の地域包括ケアを実現するため、重要な要素となる地域住民の行動変容を促すための情報発信や仕組み作りに取り組んでいます。

「本別地域包括ケアキックオフ」
2017年3月、本別町において、「地域包括ケア」に取り組んで行くことを地域へ発信し、町としての取り組みについての覚悟を伝える、キックオフイベントを行いました。今回の企画には、鎌田實所長に加え、諏訪中央病院の院長補佐でありドクターGとしても名高い山中克郎先生、同諏訪中央病院の家庭医プログラムディレクターを務める新進気鋭の総合診療医奥知久医師を講師としてお迎えしました。

なお、行動変容は、あらゆる世代の住民が関与していく必要があります。実施した企画は、地域の自治会の代表者に向けたもの、地域の小中学校の子供に向けたもの、地域で働く医療・介護・福祉の専門家に向けたものなどを実施。

とても内容の濃い、地域で何かが始まる予感を感じさせるイベントでした。

<鎌田實所長による講演>

<山中克郎医師と奥知久医師による子供向け臨床推論>

「地域包括ケア進捗報告会」
2017年3月の「地域包括ケアキックオフ」から一年。一年間の本別町の取り組みを住民に報告するとともに、住民と共に改めて本別町の魅力を考える機会を持ちました。
さらに、後半は本別町商工会青年部が主催する「豆マカナイト」に参加し、鎌田實所長による『豆と健康の講話』を行いました。本別町は何といっても日本一の豆の町。地域の特産品である良質のたんぱく源でもある豆をたくさん食べ、鎌田式スクワットを行うことで“貯筋”し、生きがいをもって暮らしていくことの大切さをみんなで考えました。

<豆と健康の講話の様子>

地域医療人材育成

本別町は、北海道の道東・十勝地域に位置し、地域の主要都市である帯広市から車で約1時間かかることもあり、地域の医療・介護・福祉の専門人材は不足しています。
そこで、限られた地域の資源である医療・介護・福祉の人材がより地域で活躍することが出来るように、これからこの地域に専門家として飛び込んでくる人材がより充実した学び多き環境となるため、地域医療人材育成の取り組みを行っています。

「医療・介護・福祉専門職向け研修会」
本別町において活躍する医療・介護・福祉の専門職向けに、定期的に研修会を実施しています。
第一回目は、「地域包括ケア」について行いました。鎌田實所長からの「なんで地域包括ケアを長野で始めたか?」という、本質的な講話に始まり、内閣府地方創生総括官でもある唐澤剛氏より、町づくり・地域づくりという観点における地域包括ケアの重要性を分かりやすく解説いただきました。「地域包括ケアと地方創生は表裏一体」であると熱く語っていただきました。

<唐澤剛氏による講演>

第二回目は、身近な地域にある「医療」「介護」「福祉」のリソースについて、考えてみました。普段は自分の持ち場があり、自分の立場からしか考えたことがない地域の他部署や多職種。改めて、地域を俯瞰して眺めた時に、地域にとって何が足りないのかを考えるワークショップを行いました。

<専門職によるワークショップの様子>

第三回目は、本別町の地域を支える国保病院のワーキングチームから、「新公立病院改革プラン」の骨子発表を行いました。これまでさまざまな事情も抱え、地域の中では批判の声も多かった国保病院自らが、先んじて“変わらなければならない”ことを宣言しました。

<ワーキングチームによる改革プラン発表>

それを踏まえて、鎌田實所長より「地域包括ケアのための第一歩」というテーマの講演を行い、その後町民一人一人ができることは何かを考えるワークショップを実施しました。

<高橋町長と鎌田所長>

東京都町田市の取り組み

地域包括ケア研究所は、東京都の郊外部・町田市において、日本一熱い地域包括ケアからの地域づくりに取り組んでいます。
多摩丘陵の小高い丘に位置する「まちだ丘の上病院」を起点とし、地域を支える医療機関として活動を開始しました。
また、東京都内という好立地で、一方で貴重な里山が残る町田市小野路という地域は、地域医療を学ぶ場としては絶好の立地です。私たちは、この医療機関を“より実践的な地域医療”を学ぶ場としての活用を考えています。
私たちが目指すものは、小さくともここでしか学ぶことができない環境です。

<桜並木とまちだ丘の上病院>

まちだ丘の上病院としての再出発

「まちだ丘の上病院」は、もともと南多摩整形外科病院と呼ばれる、障害者(児)を対象とした機能改善医療を手掛けていました。全国的にも特殊な、専門性の高い分野です。しかしながら、あまりに特殊な領域がゆえに、継承者不在により閉院を決めていました。
地域包括ケア研究所は、残された入院患者さんとあたたかな心と想いをもったスタッフに勇気づけられ、この病院を支援し、地域を支える医療機関として再生させるプロジェクトを始めることにしました。

<鎌田實所長による開院お披露目式>

3つの約束

「まちだ丘の上病院」は、職員からの公募により名称を決め、3つの約束を掲げて再出発しました。
3つの約束とは、「あたたかな医療」「確かな医療」そして「共に歩む医療」です。
この3つの約束は、これからの町田という42万人の住民が暮らす地域を支えるために一番大切な要素を凝縮させ、覚悟を込めました。
私たちの仲間は、この3つの軸をいつも胸に、一日一日を大切にしています。

<3つの約束研修会の様子>

学びの場としての町田

「まちだ丘の上病院」は、医療機関としては例を見ないほどスピード感と広い活動領域と学びの機会がある場所です。
まず、私たちは、医療機関としての経営の再建が求められていました。チーム一丸となって取り組んだ結果、3か月で黒字化の目処をつけました。私たちの医療機関は、経営という観点でもスペシャリティを学ぶことが出来ます。地域を支える医療機関であるためには、最低限の経営体力も求められます。
続いて、地域を支えるために、地域との関わりを持つためのきっかけとなる場作りを手掛けてきています。これまで、2回の講演会やバザー、クリスマス会などの地域との交流を作るための企画を次々と実現しています。

<お花見バザーの様子>